だんだんと秋らしい気候になってきましたね。私は秋生まれということもあり、少しずつ涼しくなってくるこの季節が大好きです。今回は秋生まれの心理学者について調べてみました。
ジェローム・シーモア・ブルーナーは1915年10月1日生まれのアメリカの心理学者です。認知心理学の生みの親の1人であり、教育心理学の分野でも有名です。子どもたちの教育に重要なのは、教師がただ教えるだけではなく、子どもたちに気づきを与え、子どもたちが自ら学習の構造を発見することだとして「発見学習」を提唱した人物でもあります。そんなブルーナーは晩年、語り手が自身の経験などを通して紡がれる物語「ナラティブ」について研究していました。似たような言葉で「ストーリー」という言葉もありますが、ストーリーは主人公がいてその人の話を指す一方、ナラティブは自分自身が主人公である主観的な話を指すという点で違いがあります。つまりナラティブでは、自分自身の経験を物語として語るのです。
ブルーナーの代表的な実験にはこのようなものがあります。エミリーという女の子が1歳10カ月から2歳10カ月までの間、寝る前に両親や自分自身に向けて自発的に話す語り(ナラティブ)を観察しました。その内容は、初めは出来事だけを述べていたものから徐々にその出来事の因果関係についても述べるようになりました。さらに実験の後半ではその出来事について自分が考えたことや感じたこと、他者がどう感じているかについても話すようになりました。つまり、大人と日々の出来事を共有しながら、他者の気持ちや考えを聞き、それを繰り返し経験することで、だんだんと自分や他者の気持ち、考えなどを理解できるようになったのです。ブルーナーの実験によって、幼い子どもや発達に問題を抱えている子どももナラティブによる対話を通して心の理解が可能なことを見出しました。
ナラティブを語るのは子どもだけではありません。私たちの周りにもナラティブはあふれています。「最近の若者は…」と過去の経験から自分の考えを語り始める人や、「自分たちが子どもの頃は…」と過去の思い出を語る人もいますね。身近な人のナラティブに耳を傾けて、感じたことや考えを共有しながらお互いの心の動きを見つめることは、対人関係を築く上でとても大切なことだと思いました。
