梅の花が咲く少し前に、どこからともなくフルーティーなさわやかな香りがする。どこか近くで「ロウバイ」が咲いているのだなと少し嬉しくなる。寒いばかりの冬はもうすぐ終わって、春が近づいているのだというサインだからである。
「ロウバイ」のことを知ったのは、私が大人になって都市部で生活するようになってからである。少なくとも、東北の実家周辺では見かけたことがない。1月の終わりごろ、近所のどこかから、良い匂いがする。新しくできた友達に「いい匂いがするけど、何かな?」と聞いてみた。「これはね、ロウバイと言ってね、花びらが蝋みたいに見えるからそういう名前なんだよ。ここに咲いているね。」と近所の庭先に咲く「ロウバイ」を教えてくれた。漢字で書くと「蠟梅」である。黄色くてつややかな花は小さくて可愛らしく、冬の寒く凛とした青い空に良く映える。四季を通じた植物の美しさを感じた一瞬だった。
地球温暖化の影響か、ロウバイも梅もずいぶん早くに咲くようになった。人間にとっては、少し残念な気持ちもするが、植物は地球のリズムと共に生きているだけなのである。植物の力強さとしたたかさを感じながら、春を楽しもうと思う。