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ムーミンと冬眠への憧れ

「ムーミン」は言わずと知れたトーベヤンソン作の小説のキャラクターである。私自身は昭和のテレビアニメ(トーベヤンソンからのクレームで作品を海外で放映出来なくなっているらしい)を毎週楽しみに見ていたのだが、私が大好きだったのは、ムーミン達が冬眠するというくだりだった。スナフキンやミーやミモレの人間の姿をした者たちは、冬の間は別のところに引っ越しをする。ムーミン達は冬眠に入りムーミン谷は雪に埋もれ春を待つのである。

そう、私は冬眠に憧れていた。私は小さい頃から冬が苦手であった。田舎だったせいもあるのか、寒くて薄暗くて湿っていて、体も心もスッキリせず、とにかくいつも眠くなってしまう。寒い冬の間に暖かな布団の中で眠って、起きたら春、ムーミンの生活サイクルはまさに私の理想だった。羨まし過ぎる。しかし友達に話しても共感を得られることはなかった。なぜなら、冬はクリスマスや正月という子どもにとっての一大イベントが待っており、みんなの気持ちは上がり気味である。みんなは気持ちの落ち込みを我慢して「冬楽しみ」と言っているに違いないとその時の自分は思っていた。

ところが冬の気持ちの落ち込みは、大人になってからも続いており、15年ほど前に「季節うつ」の症状であることがわかった。その時はたと気が付いたことがある。「私以外の人は、冬だからといって眠くならないらしい。眠気と戦ってがんばって一日を過ごしているわけではないらしい。みんなは我慢せずとも活動的に生活できているから冬でも元気なのだ。」その後医療的な取り組みをはじめて「冬だけれど前ほど眠くない自分」を知ることになる。もっと早くに自分の体質を客観的に知りたかったとは思うが、冬眠に憧れながら何とか寒い冬を乗り切っていた自分を愛おしく思う。頑張った自分を褒めてあげたい。

 

冬は日照時間の減少による睡眠ホルモン「メラトニン」の増加、体温維持のためのエネルギー消費の増加、セロトニンの減少などで眠くなりがちである。朝、太陽光を浴びたり、寝室の温度を調整したり、入浴で深部体温を調整したり、軽い運動や栄養バランスを気遣ったりと日々の暮らし方の工夫も欠かせないものだが、日常生活への支障が出るほどの強い眠気や倦怠感、過食が続く場合は冬期うつ病の可能性もあるので、専門医への相談も検討することが必要と思われる。

冬の季節を、楽しくてたまらないというハイテンションと言うわけではないけれど、空気が澄んでいてピリッとした寒さも気持ちが良いものだくらいの緩くのんびり楽しめるくらいで、これからも乗りきりたいと感じている。

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