7月は七夕の季節。「たなばた」とは元々、古くから伝わる日本の禊(みそぎ)行事だったそうです。禊とは、自身を滝や川、海などの水で洗い清めることです。「棚機女(たなばたつめ)」と呼ばれる女性が着物を織り、神棚に供えて、豊作を祈ったり、けがれを払ったりしたそうです。一方中国では、こと座のベガは裁縫をつかさどる星だそうで、それにちなんで旧暦の7月7日(現在の8月頃)に裁縫の上達を願って星に祈りを捧げる風習もありました。それが平安時代の日本に伝わり、宮中行事として神聖な梶の葉に和歌を書いて願い事をしていたそうです。
さらに旧暦の7月7日は、天の川をはさんで「こと座のベガ」と「わし座のアルタイル」と呼ばれる星座が最も輝いて見えることから織姫と彦星の物語が生まれました。2人は1年に1度、再会という願いを叶えますね。2人のように「願いが叶いますように」と各々の願いを短冊に書いて笹や竹につるしてお祈りをするようになりました。
七夕のお話では、織姫と彦星の間に天の川があって、少し距離がありますね。また、1年に1回しか会えない関係。この距離や会える頻度こそが、2人を運命づける大切なもののように思います。近すぎてしまったら運命の人だと気が付かないかもしれず、逆に遠すぎてしまったらそもそも存在にすら気が付かないかもしれません。
このように私たちは日々、いろんな人とそれぞれに合った距離感で接しています。物理的な距離感もあれば心理的な距離感もあります。新型コロナウィルスが蔓延したときには、「ソーシャルディスタンス」で人々の間に距離が生まれ、孤独を感じた人もいれば、少しホッとした人もいたかもしれません。また、家族とずっと一緒に居すぎたことでトラブルが生じたという人もいるでしょう。距離は私たちの心に影響を与えます。近ければ良いというものではなく、ほどよく適切な距離感を保つことが重要です。対人関係では相手の気持ちも考慮しなければならないので難しいですが、自分と相手が心地良いと感じる距離感を大切に、周囲と関わることができるといいですね。