筆者が担当する「よりよいコミュニケーション」も3回目となりました。今回で最後となるのですが、最終回は、交流分析の「ストローク」「ゲーム」という概念を参考に、“自分”も“周囲”も明るく和やかに過ごせるような「よりよいコミュニケーション」を提案できたらと思っています。
「ストローク」とは、“撫でる” “さする” という意味もあるのですが、交流分析では、「相手の存在を認める言動すべて」をさします。「おはよう」などの挨拶から、相手を褒めたり、労うなどの肯定的なストロークもあれば、叱責、批判というような否定的なストロークもあると言われています。
赤ちゃんを抱っこした女性が赤ちゃんに視線を落としながら笑いかけると、赤ちゃんも笑顔になる、さらに女性が「かわいいね」「いい子ね」と語りかけると、赤ちゃんは声を出して身体をもぞもぞさせるというような場面を思い浮かべてみてください。女性の肯定的なストロークに赤ちゃんが反応しているのです。このように、人は小さい頃からストロークを求め、それを糧にして「自分は存在していていいんだ」「自分はOKなんだ」と自尊心を高めていくのです。
ただ、ストロークが不足すると、人は否定的なストロークであっても求めようとします。1つ例を挙げましょう。
A子「最近、学校行ってもつまらないんだよね」
母親「あら、先生の教え方もよく分かるし、友達とも話があうしって言っていたじゃない」
A子「だって、先生、忙しそうだし。分からないとこ聞きにいけない」
母親「先生に都合を聞いてみたらどうなの?」
A子「だって、話そうとしていたら先生は職員室に帰っちゃうし」
母親「職員室に行ってみたら?」
A子「だって、職員室行くの恥ずかしいし」
母親「お友達と一緒に行ってみたら?」
A子「だって・・・・」
母親「だって、だってばかり!結局やる気の問題なんじゃないの!」
このように、相手のアドバイスを全て否定したり、または喧嘩をふっかけてくるような言い方をしてきたり、毎回同じようなミスをしては相手を怒らせたりというような行動も否定的なストロークではありますが、ストロークを求めているのです。また、このようなやりとりを「ゲーム」と交流分析では考えています。私達が健やかに和やかに過ごすには、まずはこの「ゲーム」に気づき、そこから抜け出すことです。会話を止め、他の話題を振ったり、または相手に「あなたはどうすればいいと思う?」などと切り返してみるのも1つでしょう。そして、何よりも肯定的なストロークを発信すれば、それがブーメランのように自分に返ってくるはずです。健やかで和やかなコミュニケーションを目指してみてください。