心理学

よりよいコミュニケーション Part2

前回、筆者が担当した「よりよいコミュニケーション Part1」に引き続き、よりよいコミュニケーションのヒントとなるようなお話しをさせていただきます。

前回は、こころの状態(自我状態)に3つの領域「P(親)、A(大人)、C(子ども)」があり、それぞれ、Pは「批判的なところや労わったり、褒めたりする」機能、Aは「冷静で客観的に対処する」機能、Cは「自由で素直なところと、周りの見て同調的な」機能があることをご紹介しました。

今回は、交流分析の中の「やりとり分析」を参考に、3つのコミュニケーションを紹介し、コミュニケーションをよりよくするヒントを提案できたらと思います。

自分の中に3つの自我状態があるということは、相手も同様であると想定してみましょう。やりとり分析では、3つの自我状態(P・A・C)のどの自我状態から対話が始まり、相手のどの自我状態(P・A・C)から反応が返ってくるのかを分析します。

では、3つのコミュニケーションについてです(下図を参照ください。やりとりを矢印で示しています)。まずは、「相補的やりとり」について紹介しましょう。人は対話しているときに、相手から期待通りの反応が返ってくると「理解された」「聞いてもらえた」と感じるものです。それが「相補的なやりとり」なのです。

例えば、Aさんが、自我状態の【C】から「ああ、疲れた~」とBさんの労わりの【P】に向けて対話をしたとします。Bさんの労わりの【P】が「お疲れ様でした。ゆっくり休んでね」と返すと、2人のやりとりはスムーズであり、また心地よさも感じられるのではないでしょうか。

次に、「交叉的やりとり」についてです。期待通りではなく、「失望」「腹立ち」のような否定的な感情が残るやりとりと言われています。

例えば、先の例のAさんの【C】に対して、Bさんも【C】で返したとすると、「私だって疲れてるんだから、何とかしてよ!」というようなやりとりになります。せっかく労わりの言葉を期待していたのに、相手のことを労わらないといけないのかとがっかりしたり、相手を責めたくなったりするでしょう。

最後に、「隠されたやりとり」です。これは、表面的な言葉のやりとりの陰に隠された心理的な(気持ち)があるやりとりです(図の点線で示された矢印が隠された気持ちです)。

例えば、A君の【P】が「お母さん、帰りが遅いじゃないか!」と怒ったとします。しかし、表面的な言葉には表れない、A君の【C】から「お母さんともっと遊びたい。一緒にいたい。」という素直な気持ちがあると考えられます。これが隠された(気持ちの)やりとりでもあるのです。

3つのコミュニケーションのうち、「相補的なやりとり」を目指すと会話はスムーズであると言われています。その次に自分の【A】から相手の【A】に向けて対話を継続すると建設的な会話になると言われています。まずは相手の気持ちを受けとめて、こちらの主張をするという流れでしょうか。では、いつも部下の不満ばかりの上司とのやりとりを例に挙げましょう。

 

上司:「いや~。まったく皆、仕事が遅すぎるんだよ!」

自分:「確かに、納期ぎりぎりだと管理する方はいつも大変ですよね。お疲れ様です。」

自分:「進捗状況を見える化することで、どこをサポートすればよいか分かると思います     が、いかがでしょうか。」

 

不満ばかりでなく、上司も含め、周囲でサポートしていく体制をとろうという主張をしている場面です。まずは上司の不満を受けとめ、自分の主張を伝えていきます。その際、相手が応じなくとも、再び、受けとめつつ、主張を伝えていくというように、自ら建設的な対話の姿勢をとることが重要となります。

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